クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの知見がメディアに掲載されました。
出典:不動産経済ファンドレビュー Real Estate Fund Review No.639
弊社グローバルオフィスの調査に基づけば、2030年までのオフィスワーカー純増数はアジア太平洋地域全体で約1,500万人とされ、米国(約300万人)、欧州(約500万人)1 を上回る。また、同調査によると、2030年までに生じる過剰なオフィス・スペースは、米国で約100万平米、欧州のトップグレードオフィス(4,800万平米)で約2,000万平米にも達する。 同様のリスクは、オフィス出社率の高いアジア太平洋地域では、欧米に比べ低いと言えるだろう。しかし、地域内の都市別にみれば、過剰なオフィス・スペースが生じる背景もそれぞれ異なることには留意したい。
(高いリスク)香港
プライム・オフィスの平均築年数は23年で、地域全体平均(16年)より高い。全体の約66%がプライム・オフィスだが、55%がサステナビリティ認証を取得していない。非認証物件と比較すると、同認証物件の賃料は約5~25%高く、稼働率も3~5%程度高い。平均募集面積率が過去15年間で最高水準の17%と高止まりする中、非認証物件で余剰スペースが増大する可能性は高い。
(中程度のリスク)東京
プライム・オフィスの平均築年数は33年、築40年超の築古オフィスビルは再開発の対象となる。全体の約55%を占めるセカンダリー・グレードの物件の多くも、大規模改修を必要としていくだろう。しかし、築古ビルの多くは立地条件に優れており、包括的なビル・メンテナンス基準(任意)に基づいた行き届いた整備がなされている傾向。
(同)シドニー
プライム・オフィスの平均築年数は28年で、地域全体平均(16年)より高い。全体の64%を占めるプライム・オフィスの99%がサステナビリティ認証を受けている(地域平均の取得割合は57%)。一方、セカンダリー・グレードの31%がサステナビリティ認証を取得しておらず、平均築年数は70年を超えている等、グレード間の格差が非常に大きい。近年の事例を踏まえると、セカンダリー・グレードがプライム・オフィスへ改修される事例は増加傾向。
(同)上海
プライム・オフィスの平均築年数は10年に過ぎない。また、プライム・オフィス比率も、全体の45%と地域平均(50%)を下回る。しかし、2026年までに既存ストックの28%相当もの新規供給がアクセスの良い郊外地域で見込まれているため、同比率も上昇していくだろう。賃貸借契約期間が比較的短期であるため、新規竣工のタイミングに合わせて、全体の55%を占めるセカンダリー・グレードのリーシング環境の悪化が見こまれる。
(低いリスク)シンガポール
プライム・オフィスの平均築年数は17年。しかし、全体の63%を占めるプライム・オフィスのサステナビリティ認証取得割合は90%以上を占める。非認証物件と比較すると、同認証物件の稼働率は約2~4%、賃料は約7~10%2上昇したことからも、同認証の有無でビル別パフォーマンスが二極化することがわかる。
最後に
アジア太平洋地域の都市別に余剰オフィス・スペースが生ずるリスク要因は、各都市のビルのグレード、立地条件、築年等物件などのプロファイルにより異なる。それぞれの品質やライフサイクルに見合った資産最適化計画をいち早く推進することを弊社では推奨している。
表:都市別のリスク総合評価
1 Moody's Analytics
2 計測時点は2020年末から2023年6月末まで