2022年上半期
東京市場での投資・開発活動は加速しています。ESRとGaw Capitalは大々的な開発計画の発表を通じて、日本市場への新規参入を果たしました。@TOKYOのような既存の国内プレイヤーは、大阪圏における新規開発計画を竣工しました。一方、STACK Infrastructureや Internet Initiative Japanなども、新規開発または既存施設の拡張計画を発表しています。建設中の総発電能力は少なくとも78MW以上と推定されていますが、今後もさらなる開発計画発表が見込まれていることから開発計画の上方修正の可能性は高いでしょう。都心部の用地取得は難しいとはいえ、周辺の郊外エリアであれば、ハイパースケール型キャンパス向け開発用地を確保することは、まだまだ可能です。
都市別比較をみると、一人当たりのストック(データセンター床面積)において、東京は、シンガポールの5%未満のストックを有しているに過ぎず、競合都市と比較しても、データセンターのストックは依然として不足しています。このため、主要なクラウドサービス事業者を中心としたテナント需要の急拡大に対応する過程で、データセンター利用者の使い方も多様化してきました。今後も、投資家と運営会社の双方において目覚ましい業績改善が見込まれています。
都心から30キロ圏を超えるエリアの市場発展の可能性は?
過去1年間、印西周辺に集積する新規プロジェクト発表が増加しています。しかし、東京圏における印西以外のデータセンター開発適地への関心も高まってきました。データ伝送速度の意図しない遅延を防ぐため、これまでのほとんどの開発用地は東京都心、大手町から半径30km以内にとどまってきました。30km圏内に位置する多摩、府中など西東京の郊外エリアであれば、DC開発の主な要件となる用地取得・労働力へのアクセス・安定的な電力の供給が実現できるため、過去4-6月期においても、機関投資家から資金調達を受けた大規模な開発計画が発表されています。例えば、AirTrunkは、最初のTOK1施設(60MW)を印西で竣工しましたが、第二弾となるTOK2センター(110MW)は西東京で開発を行うと発表しました。これは、三鷹市でESRが計画しているデータセンター(20MW)に追随することになります。NTT、デジタルリアルティも、三鷹市に既存施設を保有しています。また、相模原では、HND1(80MW)の開発も進行しており、今後も発展が期待されます。
図1:都心30キロ圏内の主なデータセンター立地図
出所:各種報道、MSCI/RCA
現状の東京圏・大阪圏の開発計画に基づけば、少なくとも2026年までは東京圏では全体の面積の10%超、大阪圏では同17%を超える空室面積の消化が見込まれています。計画されている供給では、需要の急速な拡大をカバーすることはできませんし、データセンターが印西に集積しなければならない理由も存在しません。仮に、30キロ圏を超えるエリアであっても、安定した地盤、十分な用地確保、安定した電力供給が期待できるエリアであれば、割安な賃料設定、データ遅延の可能性を最小限に抑える最新機材の導入などを呼び水とした新たなデータセンター開発は十分に期待できると弊社は判断しております。
APAC地域:市場概要
さらに、米国と中国のハイパースケール企業の需要は、APAC市場をさらに拡大させています。新発の開発会社や投資家は、こうした市場の大半で新規開発を次々に発表しており、経験豊富な企業もDC規模の拡大を戦略的に追及しています。このため、政治、規制、開発要件が地域によって異なるにもかかわらず、アジア全域をカバーするポートフォリオも目につき始めました。
地域全体に影響を及ぼすような大きな出来事としては、シンガポールのデータセンター・モラトリアム(一時停止措置)が終了したことが挙げられます。地域最大級市場としての位置づけから、2019年に施行された開発停止規制を契機に、複数の開発会社はジャカルタなどのティア2市場に新たな機会を求めるようになりました。改正後のシンガポールのデータセンター開発に対する要件は、同開発は継続するとしても、エネルギー効率や持続可能性にかかる基準を厳格化するものです。しかしながら、業界の展望は引き続きポジティブであり、市場参加者はすべからず持続可能なエネルギー源を安定的に調達することを模索し続けています。
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WEBINAR REPLAY|アジア太平洋地域のデータセンターが次に目指すものは?
(2021年上半期アップデート)
大企業、政府機関などがクラウドへの移行やIT変革を進める中、アジア太平洋地域全体では、目覚ましい市場の成長が続いています。優良な用地の取得が難しくなる一方、多層階にまたがるデータセンターの建設による床面積拡大が活発化し、より効率的な運用を目指す動きが世界各地に広がっています。
このウェビナーでは、当社の業界エキスパートが次のような見識を洞察しております。