中国でCOVID-19の発生がピークに達していた期間、主にウイルスの蔓延を阻止するために課された旅行制限の結果として、国内観光産業は大きな打撃を受けました。観光旅行は実質的に停止となり、予約数と稼働率は急落、そして中国のホテル所有者と運営事業者は前例のない圧力に直面しています。
しかしながら、国内の多くの地域で封鎖が解除されて以来、中国のホスピタリティ業界ではビジネス活動が勢いを取り戻し始めています。世界のホテル業界のデータを追跡している米国のSTR社によると、中国のホテル稼働率は4月11日時点で30.0%を上回り、2月第1週目の7.4%から上昇を記録しました。
What’s Next ― 次のステップ
業界が回復し始めるにつれて、中国のホテルの所有者と運営事業者は、ホテル不動産に関する短期的および長期的計画を立てることの他、いくつかの重要な課題に対処する必要があります。課題としては以下の3つが考えられます。
- ホテルの建物内における安全衛生
- スマートビルディング・テクノロジーの採用と実装
- 不動産資産の改築/リポジショニング
ホテル建物内における安全衛生
COVID-19が中国で広まり始めた際に、多くのホテルオペレーターは、ウイルスの蔓延防止として、ホテルの建物内における健康と安全レベルを強化する措置を迅速に取り入れました。検温や定期的な清掃スケジュールなど、これらの取り組みは短期的には継続していくでしょう。
スマートホテル
近年のテクノロジーの急速な発展に伴い、中国のホテル宿泊客は、ハイテクな解決方法を特徴とする効率的で便利な新しいホテルサービスをますます求めるようになっています。また、スマートホテルの需要は、COVID-19渦中やパンデミック後の世界において増加していく可能性があります。新しいテクノロジーの導入については、今後も効率性と利便性の追求が後押ししますが、ホスピタリティ業界においては、スマートテクノロジーによる宿泊者の健康モニタリングなど、安全衛生面からもまた原動力となるでしょう。
不動産資産の再評価
COVID-19の影響とそれがキャッシュフローに与える影響を考えると、一部のホテルの不動産所有者は不動産資産の売却を検討し始めるかもしれません。しかし、逆にホテルオペレーターやサードパーティ・コンサルタントと協力しながら資産を改築またはリポジショニングして市場競争力を強化し、将来のビジネス成長のためにチャンスを得ようと頑張る所有者もいるでしょう。
改築またはリポジショニングのスキームにおいては、ビジネスの観点から次のような点を考慮しましょう。
- 競合他社の対処戦略・動向はどうなっているのか
- 顧客ニーズ特性は把握できているか
- 新たな標準となる宿泊者サービス基準とは何か
- 改修におけるテーマと仕様の決定
- ホテルの将来的ブランディングは何を見据えているのか
所有者が考慮しなければならない項目は多いですが、ホテルのデザインとホテルの建設・内装品質の2点も特に重要です。将来の傾向を理解または予測を行わない場合、プロジェクトの改修または再配置が失敗に帰す可能性があります。
通常、所有者は不動産の観点から資産の改修またはリポジショニングを検討しますが、現在の需要と供給の動向や、各ホテルが立地する地域の不動産市場の長期的傾向を理解することもまた非常に重要です。これらには現在と将来に渡る以下の長期的視点が含まれるでしょう。
- 観光客の消費力と地域の観光客数
- サービス産業の成長性
- 将来の観光開発イニシアチブ
- 地元で開催されている、または開催予定の重要なスポーツ、観光、文化、貿易、ビジネスイベントの把握
- 滞在活動の状況
- 地域の都市化と都市開発の予定
- 交通インフラ計画の実施状況
- 都市再生活動の進展
長期滞在を取り戻すために
中国で観光と出張が完全に再開すると、ホスピタリティビジネスの活動は通常の状態に戻り始めます。これによりビジネス旅行と観光の成長が期待されることから、ホテルのオーナーとオペレーターは、中国のホスピタリティ業界における長期的なビジネスチャンスを十分に期待することができるでしょう。将来の見通しは前向きであり、私たちも中国の多くのホテル所有者と運営事業者が、長期滞在客を取り戻すと予想しています。