経済環境
先進国の経済成長率は2023年に1.3%、2024年には1.4%へ減速が見込まれるものの、日本の実質GDP期待成長率は2023年1.1%、2024年1.2%と安定した成長を維持する見通し。東京都の雇用環境はさらなる改善が継続。2019年第4四半期から2022年第4四半期にかけて全国の就業者数は30万人の微減だったのに対し、東京都は同45万人の増加。2022年10月から12月平均の産業別雇用者数(原数値)をみると、コロナ前の2019年の同期間平均から製造業は5.0万人減少、情報通信業は同10.1万人の増加となった。
需給
2023年第1四半期末、都心5区グレードAオフィスの空室率は前年同期比3bpsの小幅な上昇となる3.7%、募集面積率は6.9%の横ばい となった。第1四半期末までの年間ネット・アブソープションはポジティブであったものの、2019年以前の過去10年平均の6割程度となった。また、テレワーク導入、フリーアドレス活用、拠点集約等を通じた、必要面積の効率化による縮小移転も増加傾向となっている。
引き続き新規供給の増加面積が、下振れする床需要を上回り、今後2年間は二次空室の増加、空室率の上昇が見込まれる。1年以内竣工予定の新規供給は、2022年比約3倍、過去10年平均新規供給の1.5倍に相当し、内定率は54.8%(下図参照)。一方、竣工1年以内ビルの内定率は当該四半期に竣工した物件の影響により24.7%にとどまっている。
賃料
2023年第1四半期の都心5区グレードAオフィス全体の平均想定成約賃料は前年同期比1.1%減少の34,327円と、緩やかに下落。想定成約賃料の下落幅は募集賃料の下落幅(同マイナス0.6%)を上回り、借り手市場が継続している。今後の新規供給は渋谷、虎ノ門等の都心一等地に集中しており、エリアマネジメントの高まった再開発拠点及び周辺エリアの空室消化が優位に進むことが見込まれる。
サブマーケット別にみると、中心地からの距離等を踏まえたエリアの序列によって空室率の上昇に差異が見られた。三田・田町エリアにおいて、新築物件の竣工によって想定成約賃料は前年同期比5.9pp上昇の29,214円/坪まで上昇したが、空室を残して竣工したため、同エリアの空室率は前年同期比24.1pp上昇の31.4%となった。一方、渋谷、西新宿においても新築物件が竣工し、一定の空室は残っているが、前年同期からの上昇はそれぞれ2.9pp及び1.2ppのみと緩やかであった(下図参照)。
ビルグレード間の格差(下図参照)も広がっている。コロナ前の2019年第4四半期と当該四半期における賃料水準を比較すると、グレードAは年平均で募集賃料は3.9%、想定成約賃料は4.8%の下落にとどまっているが、グレードBは前者が6.2%、後者が8.1%と下落幅がより大きくなっている。