不動産の需給環境は産業革命とともに変化してきた。 第一次産業革命では主に蒸気機関を原動力とする軽工業中心の発展に加え、蒸気機関車や蒸気船の発明による輸送手段の改革も進んだ。これにより、トンネル、橋、港等のインフラ需要が増加した。第二次産業革命ではガソリンエンジンや電力の産業化により自動車や飛行機が実用化されたことに加え、軽工業から重工業へ転換が起こった。これにより大規模な資本が必要となり、個人より組織が重視され企業規模が拡大した。この頃郵便局、銀行、商社等の建物や工場が多く竣工。第三次産業革命はコンピューター、ICTの普及、インターネット技術の発達や原子力エネルギーが活用され、日本の高度経済成長期と同時期に起きたデジタル革命である。オフィスビル市場では超高層ビルの開発計画が本格化した。第三次産業改革の延長線で、ドイツのインダストリー4.0が発端となりIoT、ビッグデータ、AI、産業用ロボット等最新技術を活用する第四次産業革命が足元で起きている。
また日本では団塊の世代全てが間もなく後期高齢者となり、出生率が減少するなか少子高齢化は加速する事が見込まれている。生産年齢人口減少による影響を軽減する為、今まで雇用の少なかった女性、高齢者、外国人における活躍の場を積極的に提供しようとしている。加えて労働者の過労死低下や従業員の働きやすさ、雇用改善を目的として働き方改革の導入が2019年より始まった。働き方改革は、人口構造の変化に対応する労働力構造を構築すると共に技術革新による新しい働き方の提供を推進している。
技術革新ではモバイル端末の進化に伴い、新しいライフスタイルが浸透しやすくなった。オフィス市場においては、テレワーク導入やコワーキングスペースやサテライトオフィスの浸透により、働き方やオフィスの在り方も変化している。今年に入り新型コロナウイルス感染拡大を背景に、本来在宅勤務の導入が困難であると思われた業種や企業においても導入が可能である事に気付き、この変化は加速している。
オフィスビル市場は今後「技術革新」及び「人口構造の変化」によっておきる需要構造の変化を経験することになる。本稿では、こうした変化に伴う現状や今後のワークプレイスの在り方について考える。