東南アジアとインドの都市は、ミレニアル世代とジェネレーションZが労働力に大量流入し、拡大するアウトソーシング業界の恩恵を享受
東京、2020年1月21日 – グローバル不動産総合サービス会社のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町、C&W)の最新グローバル調査レポートによると、ベビーブーム世代の退職とジェネレーションZ(Z世代)の労働力の登場は、人口動態の変動とともに、世界中のテナント・投資家・政策立案者に大きな影響を与えます。利害関係者はそれぞれ、トレンドの影響をどのように機会へと活かしていくかを理解することが必要になります。
「人口動態の変動:2030年の世界」と題された本レポートは、今後10年間で6億9300万人のベビーブーマーが定年に達し、Z世代の13億人が労働力に加わることにより、世界中の労働人口に大きな変動が起きると分析しています。また、世界中のベビーブーマー、ミレニアル世代、Z世代によって異なる働き方とライフスタイルへのアプローチと、一つの世代の労働力退出と別世代の参入が、世界の都市に与える影響についても取り上げています。
ドミニク・ブラウン博士(C&Wヘッド・オブ・インサイト&アナリシス、アジア太平洋地域)は次のように述べています。「これらの人口変動の傾向は、世界中の都市の成長ペースを加速していきます。都市は、最も優秀な人材を引き寄せるための 『場』 を確立し、それによりテナントと投資家にとって魅力のある最適な不動産機会を生み出すでしょう。」
本調査では、C&Wが世界中の137を超える都市の労働力の成長と国内総生産(GDP)の成長を比較し、潜在力の高い都市を明らかにしました。両方の分野で成長の伸びが高い都市は、不動産需要の潜在的可能性が最も高い一方、両方の分野で成長が低い場合には、低迷市場を示しています。生産年齢人口よりもGDPの成長が速い都市は、今後の価値が高まるため、投資家にとって魅力的な「生産性の高い」市場です。GDPよりも労働力の伸びが高い都市は、「生産性の低い」市場と見なされるため、優秀な人材を惹きつけて生産性を高める必要があります。
本調査では、世界で最もパフォーマンスの高い都市は東南アジアおよびインドにあり、これらの都市では経済成長と不動産市場の強さが期待できるという結論に至りました。ミレニアル世代とZ世代といった労働力の大量流入によるメリットを享受してアウトソーシング市場の成長が見込めます。現在、これらの都市は人口・経済の急速な拡大が予測されており、特に今後10年間で25歳から55歳の年齢層で人口が大幅に増加する見通しです。
この傾向はおそらくインド・バンガロールの例で最も顕著に表れています。生産年齢人口が200万人以上増加し、年間8%以上のGDP成長が予測されています。このような都市はアウトソーシング先として注目できるでしょう。テナントにとって東南アジア諸国連合(ASEAN)圏内にはさらなる機会が見込まれます。企業が 『チャイナプラスワン』 戦略を取り、中国以外のジャカルタやホーチミンといった拠点で製造活動を活発化しています。その結果、ベトナムとインドネシアでは、インダストリアル・製造業の雇用が今後10年間でそれぞれ雇用総数が1.5倍と4倍のペースで増加すると予測されています。」とブラウン博士は述べています。また、本調査は、生産性の高い都市が主に中国、つまり上海、北京、武漢、成都、広州にあることを示しています。深センもGDPの高い都市であり、生産年齢人口が大きく成長しています。
実質GDP成長 vs 生産年齢人口成長、アジア太平洋地域分析、2020-2030年
ソース: Oxford Economics、Cushman & Wakefield
アジア太平洋地域以外を見ると、ヨーロッパおよび北米のほとんどの都市は経済・不動産の成長において生産性の低いまたは低迷している市場としてランク付けされており、今後の推移を注視する必要があります。
競争が激化していく世界では、事業や人材にとって魅力的な都市であり続けるために、都市は 「プレイスメイキング」 にフォーカスしていかなくてはなりません。中国のほとんどの市場は人口推計的には弱いにもかかわらず、強い経済成長が予測されていて、多くの機関投資家を引き続き魅了する可能性があります。東京のように高齢化による人口統計学的な逆風にさらされる都市では、大胆な政策が必要であることが再確認されました。テナントと投資家は都市の推移を注視して、それに沿ったポートフォリオ構成やバランスを検討するべきです。人口統計の変動は、事業用不動産のすべての面で計り知れない機会をもたらします。その機会から最大限の利益を享受するため、今後の変動の影響をよく理解して適応していくことが重要です。
鈴木 英晃博士(C&Wヘッド・オブ・リサーチ&コンサルティング、ジャパン)は次のように述べています。
「ミレニアル世代とZ世代は、世界的な労働人口の大部分を占めることから、そのオフィス市場への影響についてグローバル・スケールで議論されてきました。一方で、日本は少子化によってその存在感が低いこともあり、これら世代を満足させるワークプレイスの構築については海外ほど理解されていないのが現状です。海外では、ミレニアル世代が11年後には徐々に50歳台を迎えだすこともあり、すでに次のZ世代へと議論の重点が移りつつあります。日本でもこれらの世代が徐々に労働人口割合を伸ばしていくなかで、最適なワークプレイス構築について議論を加速させていく必要があるでしょう。」
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