- COVID-19が世界経済の見通しに影響を与えるにつれて、オフィス市場は更に借り手市場に傾く
- 台北やホーチミンなどの供給量が限定的な市場では、流行の影響はそれほど深刻ではない
グローバル不動産総合サービス会社のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町、C&W)はオフィス市場予測レポート 「アジア太平洋オフィス市場アウトルック2020」 を発表しました。本レポートでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生により2020年は困難な一年になる一方で、テナントには更なる機会が期待できると示しています。2020年はアジア太平洋地域全体の景気減速は避けられないと思われますが、テナントは賃料水準の低下および賃貸借の好条件を享受できると予測しています。
COVID-19の世界的流行はオフィス市場のサイクルを悪化させており、特に空室が増加している市場において顕著になっています。その結果、アジア太平洋地域の主要市場の多くは、一層借り手市場になります。貸し手が借り手との長期関係を守ろうとし、競合ビル間でのテナント向けインセンティブパッケージが増加していく状況下で、交渉の主導権が借り手側であるテナントに移りつつあります。
ジェームズ・シェパード(ヘッド・オブ・リサーチ、アジア太平洋地域)は次のように述べています。
「すべての主要地域で、政府と中央銀行は経済的な影響を緩和するために政策措置と金融支援でこの状況に対応しています。中国が国内流行の制御に成功しているように見える現在、世界保健機関はパンデミックの軌道を変えることはまだ可能であると信じています。
このシナリオが妥当で、世界経済が景気刺激策によって回復すると仮定すると、2020年下半期以降は通常の事業活動の再開に連れてオフィス賃貸活動も回復していくと予測されます。一部の市場では既に回復の兆しが見え始めていますが、世界経済の逆風がこの兆候を一定程度抑制してしまうでしょう。」
グレーターチャイナでは近年、上海・北京・広州で大量供給に伴い賃料が下落傾向にありましたが、COVID-19の影響で賃料はさらに下落すると予測されます。香港では、社会不安に翻弄された不動産市場が再び打撃を受け、プライムオフィス市場はこの賃料下落が促進されるとみられます。
オーストラリア・シドニーでは、パンデミックによる経済への影響を反映し、2020年の賃料の伸びが弱含んでいます。しかし、相対的に抑制された供給と低空室率の状況では、経済の回復とともに賃料成長が比較的早く回復できると予想されています。一方、シンガポールでは現在のサイクルでの賃料ピークに近づいています。市場の信頼感が低下しているにもかかわらず、貸し手は空室不足と今後の限定供給のため、現在のところ賃料水準をキープしていますが、世界経済および地政学的な不確実性の影響もあり、企業は移転・拡張のための予算を確保できず、オフィススペースの需要を減少させています。
鈴木 英晃 博士(ヘッド・オブ・リサーチ&コンサルティング、ジャパン)は次のように述べています。 「東京の空室率は現在2%を下回る歴史的な低水準にあります。新規供給への移転を予定するテナントの退去スペースによって、空き予定となる二次空室が増加しています。その結果、市場は転換点を迎えることになるでしょう。
アジア太平洋地域はCOVID-19発生による経済的な影響を実際に経験した最初の地域となりました。中国の国内総生産 (GDP) の成長率が鈍化し、アジア太平洋地域や世界経済全体に経済的なストレスを与えています。しかし、経済活動の回復と共に、2021年までには流行前のオフィス市場の状況へと徐々に回復すると予想されます。」
レポート(英語版)はこちらからダウンロード頂けます。