グローバル不動産総合サービスのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町)は、2020年第1四半期不動産市場レポート「日本リテール MarketBeat」を発行しました。このレポートは、四半期ごとに市場のパターンを分析しながら、来期の市場パフォーマンスを予測しています。主な調査結果は次の通りです。
消費増税、暖冬に新型コロナウイルス 個人消費や観光に打撃
日本全体の冬期 (12-2月) 小売業販売額は、暖冬による衣料品の不調やインバウンド客減少が著しい一方、新型コロナ感染症による買いだめの影響で、前年同期比僅か0.6%の減少となりました。2月のドラッグストア全体の販売額は前年同月比(以下同様)18.9%増加し、衛生用品等及び家庭用品・日用消耗品はそれぞれ46.5%と30.6%増えました。しかしながら、消費増税後の需要落ち込み、暖冬及び新型コロナ感染症による訪日旅行の中止や外出自粛が響き、各種商品や衣料品は5ヶ月連続の減少を記録しました。さらに春節時期がずれた影響もあるが、2月の全国百貨店の売上高総額は12.2%減と振るわなかったです。3月以降、東京や大阪などの大都市では、営業時間短縮や臨時休業が相次ぎ、状況収束の出口がまだ見えていない中、小売業はなお一層厳しい状況に立たされています。
インバウンド急減で訪日客中心のマーケットが弱含み、心斎橋は賃料下落
新型コロナ感染症は最初2019年12月に中国で確認され、春節初日から中国政府が感染拡大を受け、海外団体旅行は禁止されました。真っ先にインバウンド関連産業が影響を受けました。2019年の訪日外国人消費全体の36.8%を占めた中国人訪日客が2月に9割近く激減しました。その後、中国以外のアジア各国も相次ぎ、訪日旅行を中止し、インバウンド客が急減しました。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2月のシティホテルの稼働率は60.2%(速報値)まで落ち、前年同月比 19.2 ベーシスポイント減となりました。百貨店も大きな影響を受けました。国内消費が低下する中、インバウンド消費に頼っていた2月の売上高は減り、特に、免税総売上高が前年同月比34.6%も減少しました。リテール不動産市場においては、テナントの売上減で、訪日客中心のマーケットが大きな打撃を受けています。特に大阪の御堂筋・心斎橋マーケットは、医薬品、化粧品やヘルスケア用品が集まったドラッグストアを中心とした「訪日客需要」店舗が、過去数年市場を牽引してきました。賃料は2015年の15万円(月・坪)からわずか数年で倍増し、2017年以降全四半期まで30万円と伸長していました。ところが、すでにオーバーストア気味となっていた「訪日客需要」店舗のニーズが冷え込み、今期の賃料は既に28万円に下がり、今後も市場ドライバーの不在が予想されるなか、さらなる賃料下落を見込まれています。
今後首都圏やその他のマーケットの賃料も下落の見通し
3月に入り、新型コロナ感染症が日本を含む世界各国に広がり、首都圏や日本の各大都市も不要不急の外出自粛を呼びかけました。ブランドショップを始め、百貨店やショッピングモールも続々と営業短縮や臨時休業を発表しました。Apple Storeは3月15日から全店舗休業し、三越伊勢丹は3月2日から首都圏店舗の営業時間を短縮しました。こういった影響を受け、各主要百貨店の3月売上高も前年同月比3~4割減少と報道されています。4月7日に政府が緊急事態宣言発令等、厳しい状況が続くため、C&Wは今後渋谷以外の主要マーケットの賃料を下落予想に改定です。
須賀 勲(C&W ヘッド・オブ・リテール・サービス)は次のように述べています。
「4月7日に東京を含む7都府県に緊急事態宣言が発令されました。Q1のインバウンドの減少による影響に加えて、店舗クローズにより小売業全体が予測不能な状態になる見込みです。すでに賃料減額の動きは加速しており、Q2以降の賃料予測も相当に下落が予想される局面となってきています。早期のCOVID-19の終息を願うばかりです。」