オフィスセクターの回復に時間を要するが、
在宅勤務トレンドにもかかわらず完全な回復が期待されると示唆
グローバル不動産総合サービス会社のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町、C&W)は、初のグローバルオフィス・インパクト調査を発表しました。同調査によると、世界のオフィス賃貸市場のファンダメンタルズは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による不況と在宅勤務のトレンドの影響を大きく受けるものの、最終的には2022年に改善し始め、2~3年後には完全に回復することが示唆されました。完全な回復のタイムラインは、世界金融不況時に観察されたものと同じですが、通勤しないで自宅から働く在宅勤務トレンド普及の影響もあり若干の遅れが予想されます。この調査報告書は、世界各国の上級研究職やエコノミストからなるC&Wの新たなチーム「グローバル・シンク・タンク」によってとりまとめられました。この調査では、世界のオフィス市場に影響を与えている循環的かつ構造的な変化と、回復への影響を分析しています。
グローバル
ケビン・ソープ(C&W チーフエコノミスト兼リサーチ部門グローバルヘッド)は、次のように述べています。
「私たちは、『オフィスはどうなるのか』という根本的でやや曖昧な疑問に答えるために、このパンデミックによって生じた力とオフィスセクターのファンダメンタルズに対する影響を科学的に考察しました。雇用の喪失、オフィスの空室率と賃料、地理的特性、在宅勤務の拡大など、これらの要因の影響を総合的に勘案した結果、すべての不動産は地域性が強く、すべての地域の市場が同じように回復への道を辿るわけではないものの、基本シナリオでは最終的に世界のオフィス市場が完全に回復すると予想される見込みであることがわかりました。」
2020年グローバルオフィス・インパクト調査の主な結果は、2022年第1四半期に予想される経済と雇用の全面的な回復と、空室率が低下傾向に転じ、賃料が上昇し始めることによるオフィススペースの需要に焦点を当てています。2025年までには、世界のオフィス空室率はCOVID-19危機以前である約11%に戻り、賃料は危機以前のピークレベルに戻ると予測されています。
レベッカ・ロッキー(C&W フォーキャスティング部門グローバルヘッド)は次のように述べています。
「在宅勤務トレンドの影響はオフィス市場の回復を鈍化させますが、オフィスを利用する職種の全体的な成長と、集積、文化/ブランド、生産性などの他の多くの要因を総合すると、オフィスは今後も経済において重要な役割を果たしていくことを示しています。この調査では、証拠、データ、科学のレンズを通して、不確実な環境を調べています。」
アジア太平洋地域
アジア太平洋地域(グレーターチャイナを除く)では(注1)、全体的には、現在の世界的な景気後退の影響は世界の他の地域よりも穏やかで長引きません。基本シナリオでみると、大部分の地域では、2021年第3四半期までにすべての経済がCOVID-19危機以前のGDP水準に回復します。短期的には、今後6~18ヶ月間のオフィス賃貸のファンダメンタルズは、パンデミックの影響によるオフィスを利用する新規雇用創出の鈍化と、当面の雇用喪失が課題となります。
このような課題にもかかわらず、ネット・アブソープションで測定される床需要は、現在から2030年までプラスを維持すると予測されています。最新のデータは、アジア太平洋地域が世界の他の地域に比べ、相対的に回復力が強いという証拠を示しています。新興市場(注2)では、地域全体のバリューチェーン(原材料の調達から顧客へ商品を届けるまでの一連の活動)の急速な拡大に伴い、オフィスを利用する雇用の割合が増加すると見込まれます。一方で、先進国市場では需要が減少し、それが賃料の伸びを鈍化させると予測されます。
ドミニク・ブラウン博士(C&W アジア太平洋地域 リサーチ&インサイト責任者)は次のように述べています。
「アジア太平洋地域は他の地域に比べると強い回復力を示していますが、パンデミックの悪影響を免れているわけではありません。アジア太平洋地域はCOVID-19危機前から多くのオフィス開発が活発化しており、それが2020年から2022年に向けた供給パイプラインの増加に繋がっています。その結果、パンデミックの発生以前に空室率や賃料の下落を抱えた市場は軟化を示しており、今回の予測ではその傾向がさらに強まることを反映しています。より広範囲の話をすると、アジア太平洋地域全体では柔軟な働き方や在宅勤務の増加は世界の他の地域と比べて普及していないため、アジア太平洋地域のオフィス市場の見通しを大きく変えるものではありません。2022年から2030年には、在宅勤務の影響で4.5%の押し下げ効果があるにもかかわらず、アジア太平洋地域のオフィス純需要は約6,770万平方メートル(729 msf)増加すると予想しています。
グレーターチャイナ
グレーターチャイナでは、COVID-19以前の空室率の増加傾向が、需要の低迷に直面して加速すると予想されています。しかし、2022年後半にはスペース需要が新規供給に追いつき、2023年には空室率が低下傾向に転じると予想されます。Aクラスビルの賃料は2020年から2021年にかけて軟化し、2022年にはほぼ横ばいとなり、2023年には再び上昇に転じると予想されています。アジア太平洋地域と同様に、契約床面積の水準は引き続き上昇すると予想されます。
「2020年グローバルオフィス・インパクト調査」は、4部構成のシリーズの第1弾です。本シリーズでは、オフィスの将来と、パンデミック後の環境でオフィスが果たす役割について、新たな考察を提供していきます。
調査報告書のダウンロードや解説ウェビナー(日本時間:2020年10月8日午前11時)の登録はこちらへどうぞ。
注1 | 2020年グローバルオフィス・インパクト調査では、グレーターチャイナをアジア太平洋地域とは別に分析しています。
注2 | 先進国には、オーストラリア、日本、シンガポール、韓国が含まれます。新興国には、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムが含まれます。
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クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドについて
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(ニューヨーク取引証券所:CWK)は、オキュパイヤーとオーナーの皆様に有意義な価値をもたらす世界有数の不動産サービス会社です。約60カ国400拠点に53,000人の従業員を擁しています。プロパティー・マネジメント、ファシリティー・マネジメント、プロジェクト・マネジメント、リーシング、キャピタル・マーケッツ、鑑定評価などのコア・サービス全体で、2019年の売上高は88億ドルを記録しました。詳しくは、公式ホームページwww.cushmanwakefield.com にアクセスするか公式ツイッター @CushWake をフォロー下さい。