グローバル不動産総合サービスのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町)は、「アジア太平洋のメインストリート 」2021年版レポートを発行しました。レポートによると、2020年にアジア太平洋地域の路面店舗の3分の2が賃料下落に見舞われ、中でも香港のコーズウェイベイでは43%急落しました。しかし、中国本土の小売セクターでは、平均賃料の下落率が5%と同地域内で影響が最も限定的でした。2020年に北京の中央ビジネス地区(CBD)の賃料は14%減少する一方で、深センの羅湖地区では賃料が5%上昇しました。このような変化があったにもかかわらず、路面店舗において賃料が高い都市のトップ3は、香港、東京、シドニーのままです。
「COVID-19の影響による国際的な国境閉鎖、ロックダウン、在宅勤務の慣行は、地域全体で普遍的に感じられています。その結果、アジア太平洋地域の賃料ランキングは、少なくとも上位10都市ではほとんど変化が見られず、香港、東京、シドニー、ソウル、大阪が上位を維持しています」と、クッシュマン&ウェイクフィールドのアジア太平洋地域のインサイト&アナリシス部門責任者であるドミニク・ブラウン博士は指摘します。「一方、インドは、同地域で最も安価な4都市を占めています。比較すると、香港の尖沙咀(チムサーチョイ)の賃料は、ハイデラバードのバンジャラヒルズの約80倍です」と述べています。
2020年第4四半期の賃料(米ドル/平方フット/年)でランキングした市場別の最も高価な店舗地区
*1 USD = 約105円
リテールのトレンド
今後の展開
小売セクターは、不動産の全セクターにおいてコロナによるかつてない逆風にさらされています。同セクターへの影響はコロナ前から存在していたものもあれば、人の移動が制限された結果生じたものもあります。この結果、高級小売店街に不均衡な影響を与えています。海外旅行の回復が鈍化している為、これらの地域が直ちにコロナ前の水準に戻るとは思えませんが、同時に消滅していくわけでもありません。世界的にワクチン接種が進み徐々に通常の状態に戻っていくことも、小売セクターの回復に寄与するでしょう。
小売セクターにおいて、消費者の支出は短期的に二極化が鮮明になるでしょう。価値重視の概念は引き続き浸透し、高級小売業の回復は加速しています。2008年の世界金融危機後、世界の高級品小売は12ヶ月から18ヶ月の間に回復しました。2020年の中国の状況はこの見解を裏付けるものであり、高級品セクターに楽観的な見方を与えるものと思われます。
コロナ禍での懸念や困難へ焦点が当たってしまいますが、長期的なチャンスへも目を向けなければいけません。今後10年間で、アジア太平洋地域の経済は引き続き世界の他の地域を上回り、そのシェアは36%から40%に拡大する事が予想されます。また同時期に、中間層の人口が15億人以上増加すると予測されています。加えて、アジア太平洋地域の多くの市場、特に東南アジアでは実店舗の床面積に十分な供給がないという事実は、コロナの影響を受けた状況を超えて好機を示唆しています。
須賀 勲(C&W ヘッド・オブ・リテール・サービス)は次のように述べています。
「昨年からのコロナ禍は現在も続いており、ハイストリートの賃料下落傾向は明確になってきています。ただし限られた銀座の一等地は、ニーズが根強く存在し5%程度の下落にとどまりますが裏通りは20%以上の下落がみられることも事実です。
コロナ禍の中にあってもアジア太平洋地域での影響は浅く、中国は目覚ましい回復を見せ、欧米企業がアジアへの投資を慎重ながらも継続しています。ライフスタイルや働き方改革が進む中、リテーラーも変革が迫られています。」
鈴木 英晃(C&W ヘッド・オブ・リサーチ・アンド・コンサルティング)は次のように述べています。
「パンデミックは、オリンピックという世界的イベントの達成を困難とさせましたが、それでもアジア太平洋地域における「ショールーム」としての東京の重要性は大きく変わっていません。足元では比較的好調なラグジュアリーブランドによる出店やリニューアルオープンが続いています。アパレルブランドは路面店撤退を加速させる一方で、オンラインに販路を伸ばすべく物流施設ニーズを増加させるなど、異なる不動産セクターでの床需要が顕在化しています。路面店舗とオンライン店舗のバランス最適化の取り組みが2021年も継続していくでしょう。」
注:詳しくは「アジア太平洋のメインストリート 」2021年版レポートをご参照ください。
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドについて
「COVID-19の影響による国際的な国境閉鎖、ロックダウン、在宅勤務の慣行は、地域全体で普遍的に感じられています。その結果、アジア太平洋地域の賃料ランキングは、少なくとも上位10都市ではほとんど変化が見られず、香港、東京、シドニー、ソウル、大阪が上位を維持しています」と、クッシュマン&ウェイクフィールドのアジア太平洋地域のインサイト&アナリシス部門責任者であるドミニク・ブラウン博士は指摘します。「一方、インドは、同地域で最も安価な4都市を占めています。比較すると、香港の尖沙咀(チムサーチョイ)の賃料は、ハイデラバードのバンジャラヒルズの約80倍です」と述べています。
2020年第4四半期の賃料(米ドル/平方フット/年)でランキングした市場別の最も高価な店舗地区
順位 |
順位 |
都市 |
ロケーション |
米ドル/平方フット/年 |
万円/坪/月 |
1 |
1 |
香港 |
尖沙咀 |
$1,607 |
50.0 |
2 |
2 |
東京 |
銀座 |
$1,223 |
38.0 |
3 |
3 |
シドニー |
ピットストリートモール |
$974 |
30.3 |
4 |
5 |
ソウル |
明洞 |
$930 |
28.9 |
5 |
4 |
大阪 |
心斎橋筋・御堂筋 |
$805 |
25.0 |
6 |
6 |
上海 |
南京西路 |
$600 |
18.7 |
7 |
7 |
北京 |
CBD |
$500 |
15.6 |
8 |
8 |
南京 |
新街口 |
$470 |
14.6 |
9 |
9 |
メルボルン |
バークストリート |
$422 |
13.1 |
10 |
10 |
シンガポール |
オーチャードロード |
$421 |
13.0 |
リテールのトレンド
- ローカリズムの台頭 - パンデミックを乗り切るために、買い物客は地元企業を支持するようになりました。Rakuten Adverising社が8,000人の消費者を対象に実施した2020年のグローバル調査では、50%の世帯が「地元企業からの購入が増えた」と回答しました。さらに、アジア太平洋地域の消費者は、海外でのオンライン購入を避け、国内でお金を使う傾向にありました。
- e-コマースの成長 -ロックダウンや健康への懸念から消費者はデジタルプラットフォームを利用するようになったため、パンデミックによりオンラインショッピングは必然的に増加しました。従前よりデジタルを必要としていたアジア太平洋地域にとって、e-コマースの成長は驚くべきことではありません。e-marketer社によると、世界のe-コマース総額3.9兆ドルのうち、アジア太平洋地域は2.5兆ドルと64%のシェアを占めています 。
- Bain & Company社によると、パンデミックの影響を受け高級品購入におけるオンラインのシェアは、2019年の12%から2020年には23%になると報告しています。しかしこれが一時的な変化なのか定着していくものになるかを判断するには時期尚早です。高級品購入の際、消費者は高品質なサービスに魅力を感じ店舗での購入を好むのが一般的ですが、マーケティング戦略としてのオムニチャネルの主流化は、高級品セクターを進化させるでしょう。
今後の展開
小売セクターは、不動産の全セクターにおいてコロナによるかつてない逆風にさらされています。同セクターへの影響はコロナ前から存在していたものもあれば、人の移動が制限された結果生じたものもあります。この結果、高級小売店街に不均衡な影響を与えています。海外旅行の回復が鈍化している為、これらの地域が直ちにコロナ前の水準に戻るとは思えませんが、同時に消滅していくわけでもありません。世界的にワクチン接種が進み徐々に通常の状態に戻っていくことも、小売セクターの回復に寄与するでしょう。
小売セクターにおいて、消費者の支出は短期的に二極化が鮮明になるでしょう。価値重視の概念は引き続き浸透し、高級小売業の回復は加速しています。2008年の世界金融危機後、世界の高級品小売は12ヶ月から18ヶ月の間に回復しました。2020年の中国の状況はこの見解を裏付けるものであり、高級品セクターに楽観的な見方を与えるものと思われます。
コロナ禍での懸念や困難へ焦点が当たってしまいますが、長期的なチャンスへも目を向けなければいけません。今後10年間で、アジア太平洋地域の経済は引き続き世界の他の地域を上回り、そのシェアは36%から40%に拡大する事が予想されます。また同時期に、中間層の人口が15億人以上増加すると予測されています。加えて、アジア太平洋地域の多くの市場、特に東南アジアでは実店舗の床面積に十分な供給がないという事実は、コロナの影響を受けた状況を超えて好機を示唆しています。
須賀 勲(C&W ヘッド・オブ・リテール・サービス)は次のように述べています。
「昨年からのコロナ禍は現在も続いており、ハイストリートの賃料下落傾向は明確になってきています。ただし限られた銀座の一等地は、ニーズが根強く存在し5%程度の下落にとどまりますが裏通りは20%以上の下落がみられることも事実です。
コロナ禍の中にあってもアジア太平洋地域での影響は浅く、中国は目覚ましい回復を見せ、欧米企業がアジアへの投資を慎重ながらも継続しています。ライフスタイルや働き方改革が進む中、リテーラーも変革が迫られています。」
鈴木 英晃(C&W ヘッド・オブ・リサーチ・アンド・コンサルティング)は次のように述べています。
「パンデミックは、オリンピックという世界的イベントの達成を困難とさせましたが、それでもアジア太平洋地域における「ショールーム」としての東京の重要性は大きく変わっていません。足元では比較的好調なラグジュアリーブランドによる出店やリニューアルオープンが続いています。アパレルブランドは路面店撤退を加速させる一方で、オンラインに販路を伸ばすべく物流施設ニーズを増加させるなど、異なる不動産セクターでの床需要が顕在化しています。路面店舗とオンライン店舗のバランス最適化の取り組みが2021年も継続していくでしょう。」
注:詳しくは「アジア太平洋のメインストリート 」2021年版レポートをご参照ください。
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドについて
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)はニューヨーク取引証券所に上場している世界有数の不動産サービス会社です。約60カ国400拠点に50,000人の従業員を擁しています。売買仲介、鑑定評価、テナントレップ、リーシング、プロジェクト・マネジメントなどのコア・サービス全体で、2020年の売上高は78億ドルを記録しました。詳しくは、公式ホームページ www.cushmanwakefield.comにアクセスするか公式ツイッター @CushWake をフォロー下さい。