グローバル不動産総合サービスのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町)は、2021年第2四半期不動産市場レポート「日本リテール MarketBeat」を発行しました。このレポートは、四半期ごとに市場のパターンを分析しながら、来期の市場パフォーマンスを予測しています。主な調査結果は次の通りです。
小売りは緊急事態宣言の反動増が寄与
春期(3-5月)の小売販売額は、前年同期比6.34%増の約36兆9700億円となりました。前年の緊急事態宣言下では今年と比較しはるかに人流が少なかったことや商業施設等の広範囲な臨時休業が反動となり、商業施設は18.7%増加、衣類品は29.91%増加しました。しかしコロナ禍前の前々年比では順に、19.1%減、20.51%減と引き続き厳しい状況が続いています。自動車は昨年の工場一部停止の反動で前年同期を21.78%上回った他、石油製品に影響を与える原油価格上昇を受け燃料は同18.99%増加しました。また、前年に買占めの影響を受けた食料品、医薬品は順に同0.4%の小幅上昇、同9.16%減少となったもののコロナ禍前を小幅に上回りました。好調な家電製品等は前年同期比0.76%と小幅上昇も、前々年比を6.47%上回っています。ワクチン接種促進による消費回復が期待されるなか、デルタ株の感染拡大リスクも残っています。
路面店市場は引き続きトップラグジュアリーが牽引
日本百貨店協会による5月の百貨店売上は、前年の緊急事態宣言の反動で65.2%増と3か月連続の増加となるものの、今年は第3回目の緊急事態宣言下でコロナ前の前々年比では43.1%減と政府の政策次第で厳しい状況が続きます。百貨店は外商に注力しており、ラグジュアリーブランドや美術・宝飾・貴金属の売り上げが伸びている他、巣ごもり消費により食料品やキッチン雑貨、リビングアイテムや寝具が貢献しました。緊急事態宣言解除後は売り上げが大きく動いた他、セール前倒し等により6月の売り上げは前々年比でマイナス幅縮小が見込まれます。こうした需要構造を背景に路面店市場では、銀座及び表参道エリアのTier1においてトップラグジュアリーによる引き合いが戻り始めており、同マーケットに限りコロナ前の賃料水準を超える事も期待されます。一方で「飲食店」「建設・工事業」「ホテル・旅館」を筆頭にコロナウイルスの影響を受けた倒産が増加する中、一等地以外のマーケットでは引き続き需要が弱含む事が懸念されるが、高条件な居ぬき物件の増加等によりコロナが終息し人が動けば、戻りは過去のリセッションよりも早い事が見込まれます。
下落が進む心斎橋のトップ賃料
Q2の心斎橋のトップ賃料は20万円となり、2019年Q4をピークに33.3%下落しています。大阪では薬局が近距離間で集積している事もあり多くの薬局が商店街から消え、緊急事態宣言による影響を最も受けやすい飲食、アパレル、ホテル・観光関連のテナントの多くが閉鎖を強いられています。また安倍政権発足以降増加するインバウンドに伴い関西では飲食やホテルのストック増加も加速し、需要増加から心斎橋Tier1の賃料は2017年Q3以降30万円と高水準で推移していました。インバウンドの貢献が大きく寄与していた為、その反動は大きいです。首都圏の一等地では前述した通り空室発生後は新規参入が下支えとなっている一方で、関西圏では空室が増加する中より良い条件の立地へ既存テナントが移転する事例は見受けられるものの、新規参入はほとんど無く空室増加が顕著となっています。加えてオーナー側はインバウンドの影響を受ける前の賃料水準に戻るといったセンチメントが広がっており、下値も残している為更に下落する可能性もあります。他方、2025年には国際博覧会が控えている事に加え、IATAは世界の旅客数が2019年レベルに戻る見通しを2023と前回予測より1年前倒し、早期のインバウンド需要回復が見込まれています。
須賀 勲(C&W ヘッド・オブ・リテール・サービス)は次のように述べています。
「いよいよオリンピック開催が近づきましたが、東京では4回目の緊急事態宣言が発令されるなど不透明感は継続したままの状況です。
人流は相当数回復していますが、各種売り上げは昨年比でみてもまだら模様です。そんな中、比較的好調なラグジュアリーブランドや生活密着型店舗が積極的に出店の姿勢を見せてきました。いずれも特定のエリアや施設にはなってきますが、来年以降の消費回復も視野に入れた動きと考えられます。早期のコロナ禍終着を祈るのみです。」
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クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドについて
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)はニューヨーク取引証券所に上場している世界有数の不動産サービス会社です。約60カ国400拠点に50,000人の従業員を擁しています。売買仲介、鑑定評価、テナントレップ、リーシング、プロジェクト・マネジメントなどのコア・サービス全体で、2020年の売上高は78億ドルを記録しました。詳しくは、公式ホームページ www.cushmanwakefield.com にアクセスするか公式ツイッター @CushWake をフォロー下さい。