中国が世界で最も魅力ある製造拠点としての主導的地位を強化
グローバル不動産総合サービスのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(グローバル本社:米国イリノイ州シカゴ、日本本社:千代田区永田町、C&W)は、グローバルな製造業にとって最も適した立地を評価した 「2021年 グローバル製造業リスクインデックス(MRI)」を発行しました。それによると、アジア太平洋・ヨーロッパ・アメリカの47カ国の中で、世界各国の経済が再開し主要製品の需要を牽引していることから、アジア太平洋地域(APAC)の大規模製造拠点が力強く回復していると示しています。
ドミニク・ブラウン博士 (C&W、アジア太平洋地域、ヘッド・オブ・インサイト&アナリシス)は次のように述べています。「世界で新型コロナウイルス感染症の流行が収まり始めるにつれて、製造拠点が急回復しています。中国は、ロックダウン下にあった欧州や米国の製造業の穴埋めをし、世界の輸出におけるシェアを2019年の約13%から2020年には15%に拡大しました。さらに、2021年第1四半期における中国からの輸出は、2019年第2四半期と比較して約27%増の1500億米ドル相当となりました。
その他の市場でも、マイクロプロセッサ、コンピュータ・チップ、医薬品などの主要製品の需要増がこれに寄与しました。韓国は、旺盛な需要と世界的な製品不足を背景に、半導体の価格高騰の恩恵を受けており、2021年1月の情報通信技術(ICT)製造業は前年同月比16.8%増となりました。一方でAPACのアパレルメーカーは、インドやインドネシアなどの市場で需要減に苦戦しています。これらの市場は、感染の第2波、第3波の影響を大きく受けています。」
中国本土では2つの傾向が顕著になっています。一つは、ロボット、人工知能、ブロックチェーンへの大規模投資によるバリューチェーンの拡大、そしてもう一つは低価格商品の国外、主に東南アジアへの製造拠点移転です。ジャカルタの製造量は昨年だけで5%増加しています。また、アウトソーシングの要件を満たしているインドへの関心も高まっています。
ベトナムに目を向けると、地域の中心的立地特性、進んだ市場統合、有利な生産コストにより、メーカーにとってますます注目が集まり、サムスン、アップル、任天堂、LG、パナソニック、インテルなどが拠点を置いています。バリューチェーンを拡大しており、エレクトロニクス分野のミッドテクにとって非常に魅力的な国となっています。
高山 裕之(C&W、ヘッド・オブ・ジャパン・デスク、ディレクター)は次のように述べています。「世界中の物流に大きなブレーキをかけた新型コロナウイルス感染症の製造業への影響は過去に例をみないものでした。早めに復調した中国は、稼働がまだ十分でない地域の製造をおぎなう形となり、経済復活スピードをさらに後押ししています。
日本企業が多く進出しているアジア諸国に注目してみましょう。再稼働準備度合いを測る持ち直し力評価で上位にランクインしたのはアジア圏で中国とシンガポールだけでした。その他は復調にまだ時間がかかると予想されます。
マーケットやサプライチェーンをグローバルに展開する企業にとっては、今回のパンデミックは今後の製造地域分散、展開する地域での不動産投資の在り方、状況に柔軟に対応できる拠点ネットワークの構築を検討する上で、そのスピードを加速させる大きなきっかけとなっています。」
2021年製造業リスクインデックス・ランキング - 主なポイント
C&Wが毎年発表している「グローバル製造業リスクインデックス(MRI)」は、製造業にとって最も有利な場所を評価したもので、各国を20の変数で評価し、条件、コスト、リスクの3つの項目で最終的に加重したランキングしています。MRIの基礎となるデータは、世界銀行、国連、世界経済フォーラム、ムーディーズ・アナリティクスなど、信頼できるさまざまな情報源から得ています。
今回の分析では、中国がすべての項目でランキング1位を占め、製造業王国としての魅力的な位置づけトップに君臨していることが証明されました。
- 持ち直し力評価
製造業の再開能力を評価する「持ち直し力」で、中国が第1位、シンガポールが第6位となりました。景況感の改善が続いており、ワクチン接種も進んでいることから、経済成長率の見通しは概ね上方修正されています。
- ベースラインシナリオ - 中国は、製造拠点の多様化を進め、通信、ハイテク(世界で生産されるロボットの実に40%が中国製)、コンピュータなどのバリューチェーンに注力していることから、ベースラインシナリオのランキングでトップを維持しました。中国の主要な製造地域は、電子部品や自動車を中心とした広東省や江蘇省、化学品や天然資源を中心とした浙江省や遼寧省などです。
- コストシナリオ - 中国はコストでも首位を維持しています。ベトナムとインドは、インドネシアに抜かれて5位から2位になりましたが、過去1年間でジャカルタの賃料が下落したことが一因です。また、インドはベトナムと順位を入れ替えて3位と4位になりました。ベトナムの賃金コストは中国よりも低いままですが、低コスト地域との競争が激化しており、地理的な接続性など、製造プロセスの他の分野で強みを発揮する必要があります。インドネシアと同様、タイも今年はコスト面での改善が見られ、賃金の上昇が続いているマレーシアを抑えて5位にランクインしました。
- リスクシナリオ: パンデミックの第一波を抑制するための早期かつ効果的なロックダウンに踏み切ったとこで、中国の製造業は2020年第1四半期後に回復を見せました。その後も一貫して製造業は堅調な業績を出し、リスクシナリオにおいて予想を上回り第1位となりました。中国は前年の5位から急浮上する中、米国とカナダはそれぞれ2位と3位に後退しました。
ティム・フォスター(C&W、アジア太平洋地域、ヘッド・オブ・サプライチェーン&ロジスティクス・アドバイザリー)は次のように述べています。「今回のパンデミックは、電子商取引の成長を加速させると同時に、グローバルなサプライチェーンの脆弱性を露呈させました。製造業の企業は、自社の回復力を高め、競争力を維持するために、現在のサプライチェーン戦略とインフラを見直すことが不可欠です。」
デニス・イェオ(C&W、アジア太平洋地域、ヘッド・オブ・インベーダー・サービス)は次のように述べています。「コロナ後の未来では、企業はインダストリー4.0を促進する高度な技術やツールへの依存を一層高めて耐障害性を維持し、より小規模で地理的に分散した製造工場による多角化を進めると考えられます。このような進歩に伴い、不動産デベロッパーは、E-コマースの拡大に対応するために施設の設計と運営方法を再構築するとともに、環境意識の高い不動産ユーザーの増加に対応するためにESGを考慮したより包括的なアプローチを採用して、一歩先を行くことが求められています。」
今後、サプライヤーに対するESG(環境・社会・ ガバナンス)デューデリジェンスは、製造業者のリスクマネジメントにおいてますます重要な役割を果たしていきます。自然災害による損失を防ぐことに加えて、特定の調達方法が環境に与える影響への消費者意識の高まりが、意思決定に反映されていきます。ヨーロッパでは、環境に配慮した消費者が急速に増えており、欧州連合のエコラベルのロゴが表示されている製品は約80万点にのぼります。このような理由から、アジア太平洋地域の魅力を維持し、製造拠点の自国回帰や地域外移転の動きに対抗するためには、ヨーロッパの先例に倣う必要があります。
表1:持ち直し力評価
2021年 |
|
2020年 |
1 |
中国 |
7 |
2 |
アイルランド |
32 |
3 |
オランダ |
8 |
4 |
カナダ |
17 |
5 |
デンマーク |
13 |
6 |
シンガポール |
29 |
7 |
フィンランド |
11 |
8 |
ノルウェー |
4 |
9 |
ベルギー |
30 |
10 |
スウェーデン |
20 |
表2:ベースラインシナリオ
2021年 |
2020年 |
|
1 |
中国 |
1 |
2 |
インド |
3 |
3 |
米国 |
2 |
4 |
カナダ |
4 |
5 |
チェコ共和国 |
6 |
6 |
インドネシア |
5 |
7 |
リトアニア |
13 |
8 |
タイ |
8 |
9 |
マレーシア |
11 |
10 |
ポーランド |
9 |
表3:コストシナリオ
2021 年 |
2020年 |
|
1 |
中国 |
1 |
2 |
インドネシア |
5 |
3 |
インド |
3 |
4 |
ベトナム |
2 |
5 |
タイ |
8 |
6 |
マレーシア |
4 |
7 |
スリランカ |
9 |
8 |
コロンビア |
15 |
9 |
リトアニア |
6 |
10 |
ロシア連邦 |
7 |
表4:リスクシナリオ
2021年 |
2020年 |
|
1 |
中国 |
5 |
2 |
カナダ |
1 |
3 |
アメリカ |
2 |
4 |
フィンランド |
9 |
5 |
チェコ共和国 |
7 |
6 |
スウェーデン |
10 |
7 |
韓国 |
6 |
8 |
ドイツ |
21 |
9 |
シンガポール |
4 |
10 |
デンマーク |
3 |
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの「2021年 世界製造業リスクインデックス」のダウンロードはこちらから。
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クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドについて
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(ニューヨーク取引証券所:CWK)は、オキュパイヤーとオーナーの皆様に有意義な価値をもたらす世界有数の不動産サービス会社です。約60カ国400拠点に53,000人の従業員を擁しています。プロパティー・マネジメント、ファシリティー・マネジメント、プロジェクト・マネジメント、リーシング、キャピタルマーケッツ、鑑定評価などのコア・サービス全体で、2019年の売上高は88億ドルを記録しました。詳しくは、公式ホームページ www.cushmanwakefield.com にアクセスするか公式ツイッター @CushWake をフォロー下さい。