物流セクターは、新型コロナウイルスの流行により突如として世界的な注目を浴びることになりました。2020年のみならず近い将来へ向けて同セクターへの注目が高まる中、本レポートでは主な牽引要因や最近の市場動向、業界の今後の見通しに焦点を当てています。
成長の牽引要因
- 基本的に、継続的な人口増加と経済の拡大により世界の中間層は今後10年間でほぼ倍増すると考えられます。消費活動の増加とEコマースへの移行の加速は、より強力で弾力性のある多様なサプライチェーンの需要を根本から牽引しています。各市場でのコネクティビティ確保のためには、交通インフラの継続的開発が重要となるでしょう。
- ヨーロッパを中心とした一部の市場における労働力不足および環境・社会・ガバナンス(ESG)への関心の高まりから、更なる効率性と透明性を可能にするテクノロジーの導入が加速すると考えられます。同様に、消費者のニーズにより敏捷かつ柔軟に応じるリソースを企業に提供している3PL事業者の利用は今後も拡大していくでしょう。
- 世界の貿易環境は今後も地政学的な影響を受け続けるでしょう。国際物流の停滞への対処として多くの短期的暫定的措置が採られていますが、企業がリショアリングの可能性や需要と供給の牽引要因の見極めを進める中、新たなサプライチェーン・ソリューションが完全に展開されるには長い年月がかかると見られます。
賃貸市場
- 2020年、インダストリアル市場は柔軟な回復力を見せ、経済成長率は過去最低の水準であったにもかかわらず需要は堅調に推移しました。そのため、産業・物流分野の空室は世界的に逼迫した状態が続いていますが、これは新規供給が限定されていることも一因となっています。
- それにもかかわらず、賃料成長は世界的に比較的達成しづらく、2020年に記録的成長が見られたマーケットは半分に満たず、またこれらも地域間だけでなく地域内においても様相は異なってる状況でした。パンデミック下としては驚くべきことではないかもしれませんが、2017年以降に年率2.5%以上の賃料上昇を記録したグローバル市場が半数にも満たしていない点を鑑みると、長期的な賃料停滞が反映されているとも言うことができます。しかし、取得コストの上昇や土地に関する税金およびインフラ費用の増加など家主にかかるコスト圧力が高まっていることから、この状況は今後変化すると予想されます。
今後の見通し
- 需要を牽引するドライバーによってプライチェーンのギャップが明らかとなり、物流アセットタイプの拡張によってそのギャップが明確化されていくでしょう。概して生産から消費までをつなぐサプライチェーンにおいては、これらのギャップは同一地域内または地域をまたいで存在する可能性があります。
- 長期的な需要を牽引する構造的なトレンドもまた、企業や消費者のパンデミックへの反応によって加速されています。そのため、投資家向けの見通しとしては、キャピタルリターンとインカムリターンが引き続き堅調に推移しますが、特にインカムリターンの貢献度が高まる可能性が高いでしょう。
- 旺盛な需要および効率化のためのサプライチェーンの再構築が相まって、新規開発用地の入手の困難さに更なる注目が集まっています。これは、同セクターにおいて不動産が将来のニーズに応えるために解決されるべき根本的問題と言えるでしょう。